カラスよ

 マンションから出て買い物に行く途中、隣家の門の上に止まっているカラスがいた。

人の目線の高さに止まっていて、私が見つめても動じる風もない。

黒々とした目が可愛らしいので、じっと見入ってしまう。

困惑するかのようなカラス。

在宅勤務中の昼休みの間の買い物なので、のんびりしてもいられないから、

そのままスーパーに向かって歩きだすと、後ろから頭に衝突するものがある。

カラスだ。

 

それから執拗に攻撃を仕掛けてくるカラス。

実は以前もカラスに目をつけられた経験のある私は、カラスは真正面からは襲ってこないことを知っていた。

後ろを振り返りながらスーパーまでの道のりを走って逃げる羽目になるとは・・・。

カラスを見つめてしまったことに後悔するも、もう遅い。

頭上高くから襲い掛かろうとするカラスに対し、パッと振り向く私。

急に真正面を向かれたカラスは、攻撃し損ねて小学校のフェンスに急停止する。

そこで私とカラスはじっと互いの目を、又しても見つめあうことになる。

きっと子育て中であったのだな。

君はカラスで、私は人間。

人が見ているので、カラスに語りかけることもできず、目で訴える。

なんとモドカシイことか。

「カラスよ、何の下心もないよ。君の目があまりに可愛くて見とれていただけなのだよ」

言葉が通じたなら、誤解は解けたはずなのに。

帰りはスーパーで買った100円傘で後頭部を守りながら、何とか無事に家まで辿り着いたのだった。