ぷー太郎

去年の夏、ぷー太郎は飼い主の腕に抱かれてようやくというように

私の方を見ていた。

それがぷー太郎にあった最後だった。

「ぷーちゃん、かわいいぷーちゃん」と声を掛けると、

飼い主さんは、「腎臓が悪いって言われたんだけど、もう歳だし、病院へは連れて行かないと決めたんです。ちゃんと自分でトイレにも行くしね。本当にこの子は偉いの 最後に会えて良かったね」そう仰った。

そのお宅で引き取られた頃、ぷーちゃんはまだ生まれて1か月も経っていなかったと思う。

いつも出勤の朝に、風除室の中でじゃれているぷーちゃんに窓ガラスのこちらから

チョッカイを出すのが楽しみだった。

幼くてヤンチャだった姿が、ついこのあいだのことのような気にがするけど、

もうあれから17年も経ったのか。

とは言え、小さく愛らしい隣人を見送り、いつも取り残されるばかりの運命から解放されるその日は、そう遠い先のことでもない。